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事業内容

平成24年度事業内容

シニア食育講座

 シニア世代の食生活の改善に係わる人々を対象に、望ましい食生活のあり方を学習する「シニア食育講座」を東京都、群馬県、新潟県で開催しました。

1.講座の概要

日時 平成25年2月17日(日)13時半~16時半
内容 「介護されたくないなら粗食はやめなさい-健やかシニアをめざして-」
講師:熊谷 修(人間総合科学大学教授)
「食事力をみがいて健康寿命をのばそう!」
講師:清水 依理子(管理栄養士・健康運動指導士)
会場 西コミュニティセンター(大ホール)
参加者 地域の高齢者支援活動に関わっている方、関心のある方
主催 特定非営利活動法人新潟夕映えの会
シニア世代食育推進協議会
講義風景

熊谷修先生の講義風景

講義風景

清水依理子先生の講義風景

2.講義内容の概要

「介護されたくないなら粗食はやめなさい-健やかシニアをめざして-」

講師:熊谷 修(人間総合科学大学教授)

  1. 老化そのものに着目した健康施策
    高齢者に対する健康施策の目的は、地域で独立した生活を営むために求められる能力“高次生活機能”の自立性の維持増進である。高次生活機能とは「交通機関による移動」,「余暇活動」,ならびに「利他的活動」など,日常生活動作能力より高い水準の能力をさす。人生の質を高い水準で維持するための能力である。自立した生活を営む高齢者集団の長期縦断研究は,からだの“老化そのもの”が高次生活機能障害の独立的なリスクファクターになることを示している。高齢者のための栄養施策は,老化の遅延を目指すものでなければならない。
  2. 老化とからだの栄養状態の関係
    老化の進行程度は身体筋力の予備力に鋭敏に反映され,その代表変数が最大歩行速度である。身体のたんぱく質栄養状態の指標である血清アルブミンのベースラインの水準に規定される。すなわち,身体のたんぱく質栄養状態が良好な血清アルブミン値の高い高齢者ほど老化が遅い。さらに強調しなければならないのはこの関係が臨床医学的には正常域とされる血清アルブミン値3.8g/dL以上の水準で認められている点である。血清アルブミンは加齢に伴い漸次減少する。したがって加齢に伴い進行する老化は,たんぱく質栄養状態が低下する普遍変化と捉えることが出来る。筆者はこれを新型栄養失調と呼称することとした。齢に身を任せ進む新型栄養失調を看過すれば老化は次第に加速され,虚弱化が促され要介護リスクと疾病罹患リスクが高まる。最新の研究検証によりこれまでノーマルレンジとされてきた血清アルブミン4.1~4.2g/dLの水準では,すでに新型栄養失調であり,積極的な栄養改善を必要とすることが明確となった。
  3. 要介護を予防する食生活
    「知的能動性」は老化に伴い最も早く低下し,“人間の品性”の構成要素として極めて重要な能力である。肉類や牛乳などの動物性食品と油脂類をよく摂取する適度に欧米化した,いずれの食品群も排除することのない多様性に富んだ食事を営む高齢者ほど高次生活機能の障害リスクが低い。キーワードは“食品摂取の多様性”である。食品摂取の多様性は,主菜,副菜を構成する「肉類」,「魚介類」,「卵」,「牛乳」,「大豆・大豆製品」,「緑黄色野菜」,「果物」,「芋類」,「海藻類」,「油脂類」の10食品群をとりあげそれぞれの食品群に対してほぼ毎日摂取していれば1点を与え,その摂取頻度で評価する。食品摂取の多様性得点は,要介護を予防する保健活動の栄養改善プログラムとして取り入れる自治体が増えている。
  4. 大規模介入研究で有効性が検証された栄養改善手段
    老化遅延のための食生活指針
    <食事の手立て>
    1.欠食は絶対さける
    2.動物性たんぱく質を十分に摂取する
    3.魚と肉の摂取は1:1程度の割合にする
    4.油脂類の摂取が不足しないように注意する
    5.牛乳を200ml程度飲む
    6.調味料を上手に使いおいしく食べる(味覚閾値の上昇への配慮)
    <知性の手立て>
    7.食材の調理法や保存法をよく知る(基礎的健康リテラシーの増進)
    8.食材を自分で購入し食事をつくる(高次生活機能の連結)
    9.会食の機会を豊富につくる(食事への誘い)
    10.余暇を取り入れた運動習慣を身につける(知的能動性の増進)
「食事力をみがいて健康寿命をのばそう!」

講師:清水依理子(管理栄養士・健康運動指導士)

  1. 健康寿命
    健康寿命とは「健康面の支障がなく自立して日常生活をおくれる期間」で、平成22年の男性健康寿命は70.42歳、女性健康寿命は73.62歳。平均寿命との差は、男性は約9年、女性は約12年ある。健康寿命を延ばすポイントは「運動・栄養・休養」の三原則であり、食事力のみがき方はライフステージ別に考える必要がある。
  2. 食習慣を知る
    食事力をみがくには、まず、自分や家族の1日の食事のすべてを記録して、摂取量や日頃どのようなものを食べているのか知ることが大事である。
  3. 食品の選択方法(「四群点数法」*)
    食品を栄養学的な特徴に基づいて4つの食品群に分類する。第1群は乳・乳製品、卵。第2群は魚介、肉、豆・豆製品。第3群は野菜、芋、果物。第4群は穀物、油脂、砂糖その他。80kcalを1点として各食品群の個々の食品を点数化している。1日に20点(1,600kcal)を基本とし、第1群、第2群、第3群は3点ずつ、第4群は11点となるように食べると、必要な栄養素を過不足なくとることができる。自分に必要な1日の点数は、身体活動レベル及び年齢・性別により異なる。
    (*「四群点数法」は女子栄養大学の登録商標です。)
  4. 調理と料理の実践について
    食品の購入前に、1人分の料理に必要な材料のグラム数と人数をかけて、1回に購入する量を把握しておく。買い物の場では、1袋、1束が何g入りかを確認し、加工品を買うときには、栄養成分表示も見るようにする。また、1回の購入分を、何日で食べきるか頭に入れて買う。例えば卵であれば、2人家族で1日に2個消費する場合、10個入り1パックを購入すると、5日で1パックがなくなる計算になる。残っていれば、「今週は卵を食べなかった」という気付きも出てくる。このようにすれば、1回1回の食事でどのくらい食べたか考えなくても、バランスよく、そしてしっかり食べることができる。計画購入という形が栄養バランスをとっていく上でとても簡単な方法になる。
  5. 何をどれだけ食べたらよいのだろうか
    まず、我が家の食事の「くせ」「傾向」「特徴」を意識する。調理方法や肉の種類、肉と魚のバランス、緑黄色野菜・根菜を忘れていないか、海藻・きのこ、芋、果物、乳・乳製品、調味料はどうかと考えていくと、食事の特徴がわかってくる。次に、「四群点数法」を使って、同じ食品群の中で何を増やして、何を減らせばよいか、また、何と何を入れ替えられるだろうかを考えて献立をたてる。食事はバランスも大切だが、おいしいことが一番である。旬の食材を使い、たくさんの種類を食べることを意識し、冷凍など保存法を工夫したり、電子レンジなどの調理器具を活用しておいしく食べよう。
  6. まとめ
    健全な食生活を送るためには、継続した暮らしの食事を大切にすることが必要である。毎日、毎食の栄養バランス完結型でなくてもよい。3日間、4日間、5日間の継続した日々の暮らしの食事で、帳尻を合わせるようにするとよい。